剣道を始めたばかりの方、お子さんが剣道を始めたという方、ジャージでの基礎稽古を終えていよいよ胴着袴を身に着けるときは嬉しいものですね!
初めて手にした胴着袴…まず出る言葉は「どうやって着るの?」ですね。
私の息子の袴を、剣道を始めたばかりの娘の同級生に差し上げたところ、その子のお母さんから喜びのメールの直後に「どうやって着るの?!」という電話がかかってきました。
ですよねーー。
胴着はなんとなく着れたようですが、袴はなかなか。そこで袴の着装をだいたい電話で説明して「着れたよ!ありがとう!かっこいい!」とテンションが上がった様子で電話を切ったのですが…。
まあまあ直後にまた電話が。「どうやって畳むの…?」
ですよねーーーーーー。
電話では説明が難しかったのでとりあえず週明けに説明することにしたのですが、剣道の袴は自分で畳めたほうが格好いいですね。
剣道の袴を畳むのは一見複雑そうですが覚えてしまえば簡単です。今回は学生さんでも素早くできる正しい袴の畳み方を説明していきます。
剣道袴を畳む前におぼえておきたいこと
剣道袴の畳み方を覚える前に知っておいていただきたいことをお話します。
たかが袴の畳み方と思われるかも知れませんが、剣道にとって正しい着装はとても重要なことなので、簡単な畳み方といってもしわが寄ってしまってはだらしなくなり、意味がありません。
袴をきれいに保つために基本的なことはしっかり押さえたうえで素早く畳める工夫を交えてご紹介しますので、あまり神経質にならずに、しかし何のために袴を畳むのかよく理解したうえで覚えてくださいね。
剣道袴の畳み方は人それぞれ
正式な畳み方はあるのでしょうけれど、朝バタバタと準備する時や急いで道場を出なければいけない稽古後などはあまり悠長に畳んでいられませんね。
私などは畳みやすさや持ち運び重視で工夫していました。
実は袴の畳み方は基本は同じでも細かい部分は結構人それぞれ。畳み方を教わった人によって意外と違っていたりするんです。
ですから、どの畳み方が正しいとか間違っているとかあまり過敏にならなくても大丈夫。
ただし、お子さんを道場などに通わせていてお母さんが袴の畳み方を知りたい場合は、先輩の父兄さんや道場の先生に一度は教わっておいた方がいいですよ。
細かい作法に厳しい道場の場合、皆と違う畳み方をしていると多分、叱られますのでね。
それを踏まえたうえでもうちょっと簡単に畳めないかな?というお話なので、これから紹介する畳み方が正式というわけではありませんので念のため。
アイロンをかけておきましょう
まずは畳む以前の問題なのですが、袴のひだが消えてしまっていてはきれいに畳むことができません。
洗濯をしたらアイロンをかけて袴のひだを復活させましょう。ひだは洗濯を重ねるごとに消えていきますので、多少面倒でもすべてのひだにアイロンをかけてくださいね。
アイロンは中温で、面下の手ぬぐいを当て布にすると袴の生地がテカるのを防げますし面下のアイロンもかけられるので一石二鳥ですね。
ちなみに袴を干すときは両脇にあるループを使って吊るし干しをしておくと袴自体の重みである程度はしわが伸びるので多少アイロンがけを楽にすることができますよ。
剣道袴の畳み方解説
それでは、正しく、かつ素早く畳める方法を解説いたします。
①はじめに、袴の前紐と後ろ紐を合わせて持ち上げます。
②袴の後ろ身頃を外側にして顎ではさみ、真ん中のひだを真っすぐ下に伸ばして一番下でクリップ止めします。袴用にいつも小さいクリップを一つ用意しておきましょう。後ろ身頃のひだが整わない状態では畳むことはできませんし、クリップ止めしないとうまく整わなくて何度もやり直す羽目になります。
③ クリップ止めしたまま、袴の前身頃を表にして床に置きます。床に置いたらまずは内側の股上の部分から折り目通りに整えていきます。股上の部分がきれいに畳まれていないときれいに畳めないので必ず先に整えましょう。
④ 股上の部分を左右畳んで整えたら、次は5本のひだを折り目通りに整えます。このとき、ひだの中に手を挟んでスッと抑えるようにすると素早くきれいにできますよ。
⑤ひだがすべて整ったら赤線の部分から内側に折り畳んで長方形にします。
⑥ 長方形になったら袴を裾のほうから3等分に折っていきます。折る場所に手刀を置いて、クリップ止めした裾を表裏一緒に掴み、サッと内側に畳みます。
このようになります。後ろ身頃のひだも乱れていませんね。このあとクリップを外してください。
⑦続いて腰板側から内側に折り畳み、きれいに三つ折りになりました。
あとは腰ひもを結ぶだけですので、頑張りましょう。
適当に結ぶとすぐにほどけてせっかく畳んだひだも乱れてしまいますので、正しい結び方を覚えましょう。
⑧ 前紐(長い方)を袴の正方形の対角線に4等分に折り、反対の前紐も同様に折ります。
⑨ 次に後ろ紐を前紐のクロス部分をまとめるように下から内側を通して上へ引き上げます。反対側も同様に。
⑩ 続いて、引き上げた後ろ紐の端を図のように左下に倒し、前紐と一緒に巻いて右上へ引き上げます。
反対側も同様に巻いて引き上げるとこのようになります。
⑪最後に残った紐の端を斜め下へ向かって通し、反対も同様に通すと出来上がりです!
ちなみにこの腰ひもの結び方ですと四つ折りにした前紐の付け根を両側に引くだけでサッと結び目を解くことができ、そのまま袴を持ち上げて履くことができます。
いざという時素早く準備できることから「出世だたみ」と呼ばれる袴の畳み方です。
防具袋やバッグに詰めても型崩れしませんのでこの畳み方を素早くできるように工夫しましょう。
なぜ剣道の袴はひだが多いのか
ところで、あの面倒な袴のひだはなぜ5本もあるのかご存知でしょうか?
実はこの「5」という数字にはちゃんと意味があって「仁・義・礼・智・信」の五常の道を表しています。
五常とは儒教における5つの道徳法なのですが、どのような意味があるのか頭に入れておくと…格好いいです。
- 仁
- 義
- 礼
- 智
- 信
己に克ち、他に対するいたわりの心。
苦しい事に負けず稽古に励み、自分一人が良ければいいのではなく他人をいたわる心を持ちましょう。
道徳、倫理にかなった行いをすることであり、利害を捨てて社会のためにつくすこと。
悪い事をしない、正しい事は勇気をもって行いましょう。
円滑な人間関係や秩序を維持するための倫理的規範であり、頭を下げて敬意と感謝の気持ちを表す言葉や動作のこと。
相手を負かすのが剣道ではありません。常に礼の心を持っていなければ剣道とはいえません。
知る、心に悟ることであり、物事を理解し善悪分別する心のこと。
学問にはげみ、広い知識を身に着けて良い事と悪い事を正しく判断しましょう。
嘘を言わない、人を騙さない、忠実な心、人を疑わず信頼する心のこと。
剣道を通じて本当に信頼できる友人や師弟関係を築きましょう。
この5本の折り目を正しくして着装することは「五常の心」を示すことになります。
袴を着装するとき、このことを思い出していただけると嬉しいです。
まさに「折り目正しい」人物になれるように!
まとめ
- 剣道の袴をきれいに保つ基本を知ったうえで素早く畳む方法を覚えましょう
- 正しく素早い袴の畳み方をご紹介
- 剣道袴の5つのひだは、儒教の教育法を表しています
剣道において正しい着装で稽古にのぞむことは基本中の基本です。
昇段審査において「着こなし」という項目があるほどですから、礼を失しない正しい着装を心掛けましょう。
たまに稽古だけならまだしも試合会場でさえ袴がヨレヨレのしわしわで剣道をしている子をみかけます。
これでは審判からの心象も悪くなってしまいます。
稽古後にきちんと正座して手早く胴着袴を畳んでいる姿は素敵ですよね。
なぜ袴を畳むのか、大事なポイントは押さえつつライフスタイルに合った畳み方を自分のものにして毎日の稽古に励んでくださいね!
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