皆さんは毎年全国高校サッカー選手権を観戦していますか?
年末年始は旅行へ行かれる方も多いでしょうけれど、自宅や帰省した実家でのんびりテレビをみるのを楽しみにしている方もいるのではないでしょうか。
スポーツ観戦が大好きな私にとって、年末年始はまさにパラダイス。中でも全国高校サッカー選手権はどの試合も楽しみに見ています。
私が今年注目しているのは関東第一高校(略して関東一高)です。現在東京都では抜群の強さですが、国学院久我山などの強豪校がひしめく予選を突破して選手権出場を果たせるかどうか、今からとても気になります。
関東一高に注目している理由は、GKの北村海(きたむら かい)チディ選手にとって最後の選手権となるから。
なぜ私が北村海チディ選手を応援しているのか、彼が最後の選手権を迎えるまでのエピソードを交えてご紹介したいと思います。
1年生で衝撃の選手権デビュー
私が初めて北村海チディ選手を知ったのは、高校サッカー選手権で敗退したチームをクローズアップして放送する「最後のロッカールーム」でした。
敗退した関東一高のロッカールームで泣きじゃくる選手たちの中でひときわ身体を小さく丸めて座り込んでいるまだ幼い表情の少年。
この敗戦のとき、北村海チディ選手はまだ高校1年生でした。
突然のデビュー戦
2年前の2016年冬、関東一高は東京B代表として選手権に悲願の初出場を果たし、開幕戦で野洲高校と対戦しました。ちなみに野洲高校は日本代表の乾選手の出身校で、足元の技術が武器の強豪校ですね。
このときの正GKは3年生の内野選手。しかし、0-0で後半14分、相手選手との接触により内野選手が負傷するアクシデントが!
急きょゴールを任されたのは1年生の北村海チディ選手だったんです。
青天の霹靂でピッチに立ったにもかかわらず、なんと公式戦の経験は2試合目だったチディ選手は勇気ある飛び出しや横っ飛びでゴールを死守してみせます。
そしてチームは後半1得点をあげ、開幕戦勝利を飾ります。
本人も「自分でも驚いている」とコメントするほど、緊張はしなかったとのこと。おそらく驚きで、緊張している余裕もなかったのでしょうね。
「自分の長所を出すプレーができた」と突然だったにも関わらず納得のデビューに胸を張りました。
先輩の思いを背負って
選手権初戦で負傷した内野選手は左手小指骨折と診断され、大会期間中の出場を諦めなければならなくなりました。
最後の選手権で出場できなくなるなんて、内野選手はどんなに悔しかったことでしょう!
このとき、なんともう一人の3年生GKである山口選手は大会前に風邪をひいており、直前合宿に合流するのも遅れて万全ではありませんでした。
チディ選手は内野選手の思いを背負ってゴールを守ることになったのです。
2回戦試合終了直前で悪夢
関東一高は初戦の勢いをもって2回戦の正智深谷戦に挑みます。
前半8分に先制した関東一高は、相手の一人退場もあり終始押しムードで後半の中盤までさしかかります。
しかし後半24分、正智深谷高校はFWに上原選手を投入し、そこから少しずつ流れが変わって行きます。
そしてとうとう後半39分にコーナーキックから同点に追いつかれてしまいました。2回戦は40分ハーフですからまさに試合終了直前の出来事。
さらにアディショナルタイムに上原選手の起用が当たり、上原選手の放ったシュートがDFに当たってハンドをとられPKを献上。
正智深谷の主将小山選手と、チディ選手の対決となりますが…正智深谷高校は劇的逆転勝利をおさめます。
掴みかけた2回戦突破が、勝利目前で手からこぼれ落ちた瞬間。
高校サッカーではよく目にする光景なのですが、急遽ゴールを任された1年生GKにとって、あまりにも自分の力量を目の前にたたきつけられたような衝撃的な試合となったのではないでしょうか。
最後のロッカールームで小野監督が選手たちに話した「強くいろ」という言葉は、引退する3年生に贈る言葉と同時に、膝を抱えて泣いている1年生GKにも向けられた言葉だったのかなと思いますよね。
北村海チディ選手の特徴と長所
1年生ながら大舞台で貴重な経験を積んだ北村海チディ選手。
想像を絶するつらさを味わったと思いますが、泣きじゃくる姿をみて必ず彼は立派に成長して選手権で活躍する!と私は勝手に母の気持ちで期待していました。
ここで、北村海チディ選手について、どんな選手なのか詳しくお話したいと思います。
北村海チディ選手の持ち味とは
チディ選手の長所とは、サッカー経験者であるナイジェリア人の父と、体操選手だった日本人の母から受け継いだ抜群の身体能力。
初戦で何度も繰り出されたビッグセーブで空中戦のボール処理能力の高さをみせました。
身長は175㎝とGKとしてはあまり高くないんですよね。しかしそこは驚異のジャンプ力でフォローできるでしょう。
生粋のGK
チディ選手がサッカーを始めたきっかけは埼玉に引っ越して観に行った浦和レッズの試合でした。
ドッヂボールが好きだったチディ少年は、キーパーの動きがドッヂボールに似ていたため興味を持ったのだそう。
小学1年でサッカーを始め、はじめからGK。
他の子より足が速くなかったり他の子より背が高いという理由で途中からGKをする子が多い中、チディ選手はGK歴の長い生粋のGKだと言えますね。
中学時代は控え
中学では育成に定評があるGRANDEに所属していました。
ですが、中学3年間で公式戦出場はゼロ。
チームメイトに現在桐光学園でGKをしている丸山拓郎選手がいて、いつもチディ選手は控えだったのだそう。
そんなチディ選手に「ものすごいバネを持っていた」と才能を見抜き声を掛けたのが関東一高の小野監督でした。
2度目の選手権敗退から最後の選手権へ
関東一高は北村海チディ選手を正GKに据え、翌年も全国の舞台に挑みます。
良いGKのいる高校は良いチームになります。
この年、インターハイでもベスト8に入り、着実に全国レベルの力をつけていました。
昨年の活躍で北村海チディ選手への注目度も相当高まっている中で迎える2度目の選手権。
ビッグセーブ連発の東京都予選
2年時、チディ選手は緊張する間もなく終わってしまった選手権のときとは見違えるような「守護神」に成長していました。
東京都予選では観衆からどよめきが起こるほどの他を寄せ付けない貫録でスーパーセーブを連発。
会場が「こいつヤバいな」という雰囲気になったといいます。
1年時は持ち前の身体能力で補っていた部分が多かったのですが、自分の立ち位置や正しいポジションどりへのこだわりを持ち、2年生ながらDF陣へのコーチングも堂々とこなします。
そして、チディ選手の活躍で関東一高は2年連続の選手権出場を決めます。
セービングの能力や反応の速さは超高校級という高い評価。
チディ選手も高い意識を持って二度目の選手権へ乗り込みました。
あっという間に終わった2度目の選手権
大注目のGKとして出場した選手権で、関東一高は昨年と同じ開幕戦初戦を戦うことになります。対戦相手は佐賀東高校。
前半、関東一高はチディ選手のビッグセーブもあり、ハイプレスをかけながら優勢に試合を展開しますが再三のチャンスに得点することができず無得点。
0-0で迎えた後半。佐賀東はMF江頭選手を投入。すると佐賀東は江頭選手を起点に流れを掴んでいきます。
そして関東一高は後半開始6分でクロスをヘディングで合わされ、先制点を許してしまいます。つづけて24分にはミドルシュートを決められ2点目を喫し、チームはまさかの開幕戦初戦敗退。
14分にエースの重田選手が競り合いで頭部を強打。ピッチから担架で場外へ運ばれるというアクシデントも影響したかも知れません。
チディ選手自身は前年より緊張したのだそう。インターハイベスト8以上を目標にしたことで却ってプレッシャーをかけてしまったのかも知れません。
しかし前年のような迷子のように泣いていた姿はどこにもありませんでした。
と、冷静に試合を振り返ることもできていました。
完全にこの先の試合にロックオンした雰囲気を漂わせていて、さらに最後の選手権に向けて期待が大きく膨らみますね!
1年生から出場するような実力のある選手は、3年間注目されることが多いですが、北村海チディ選手はアクシデントによって1年時出場した選手。しかし彼はその経験をその後に大きく活かし成長しています。最後の選手権にはどんなドラマが待っているのでしょう!
まとめ
- 北村海チディ選手は初めての選手権のアクシデントでいきなりデビューしました
- 北村海チディ選手は高い身体能力が特徴の生粋のGK
- 2度目の選手権でまさかの敗退も涙なし!最後の選手権にむけてロックオン!
若干18歳で様々な経験をして最後の選手権を迎える北村海チディ選手。
高校サッカー観戦の醍醐味はやはり選手たちやチームの成長を感じる瞬間にあると私は思っています。
チディ選手とは縁もゆかりもない私ですが、このようにファンを引きつける魅力を持った選手であることは間違いないですね。
ちなみに1年時のあどけない表情ですっかり母心を起こした私ですが、チディ選手の名前をずっと「北村海・チディ」だと勘違いしておりました。
正しくは「北村・海・チディ」なんですね。
名前の由来を記者に聞かれたチディ選手は
と返事したそう(笑)
「チディ」には神様の意味もあるようです。
まさに関東一高の守護神として活躍できるように、注目していきたいですね!