お子さんにピアノを習わせたいとお考えのお母さん!ピアノを習わせるなら英才教育で早いスタートを、とお考えでしょうか。
ピアノを始めるなら7歳までに、とか5歳からが良い、とかピアノを習うと頭が良くなる、とか様々な情報があって、ピアノは人気の習い事の上位にいつもあります。
メリットばかりが広まっているピアノにはたしかにデメリットは見当たりません。
しかしせっかくピアノを習わせるのなら気を付けていただきたい点があります。
私は6歳から13歳までピアノを習っていましたが、今でもコンクールの夢を見てうなされるほど印象深い習い事でした。
しかし大人になった今は「もっと違うかたちでピアノを続けていたら」という後悔もあるんです。
音楽は今でも大好きです。音楽は素晴らしい。
だからこそ、お母さんたちにはそれを理解したうえでお子さんに合ったピアノレッスンを与えていただきたいという思いでお話をしていきます。
ピアノのメリット1 音感が良くなる
人間の脳は生後~6歳までの6年間で急激に発達します。能力を学習できる「臨界期」という期間を逃すとその後学習能力は落ちると言われているんです。
その中でも聴覚は4歳~7歳の時期に発達するので、7歳までにピアノを始めると脳に良い影響があるということです。
この「聴力」に関してはよく「絶対音感」という言葉を耳にしますね。憧れの絶対音感…しかしこれは生まれ持った能力であり、ピアノレッスンで身につくものではないんです。
絶対音感について
私のピアノの先生はレッスンの前に必ず「聴音」という訓練からスタートしていました。
生徒が後ろを向き、先生が「ポーン」とひとつランダムに音を鳴らします。その音が何の音なのか当てるゲームのような…いえ、言葉にすると音当てゲームのようにきこえますが実際の教室の雰囲気はそれは恐ろしいもので。
「ポーン」「…ラ」「違う」 「ポーン」「…ミ?」「違う」 というような地獄のような訓練でしたね。
今思うと絶対音感を持ち合わせていない私がいくら訓練したところで伸びるような能力ではなかったのではと少し疑問に感じますね。
私には姉がいるのですが彼女は同じピアノ教室に通っていて絶対音感を持っていました。ですから、何の音かわからない私は自分には単純に才能がないのだと思っていました。
絶対音感というものは、耳にしたひとつの音がドレミファソラシドの内のどの音かを認識できる能力です。ご存知の方も多いかも知れませんが生まれ持ったものであって後天的に身につくことは稀です。
それではピアノを習っても音感は身につかないのか?
そうではありません。
相対音感について
先生の聴音の訓練ではメンタルをぼこぼこにされていた私でも、聴音の次のテストでは好成績でした。
それは先生が3小節ほどの短い曲をランダムに弾いて、それを聴いて手書きで譜面に起こすという作業でした。
最初の音が何なのかは教えてくれるので、スタートの音がわかれば次の音がわかり、また次の音も何なのかわかるのです。
この能力は「相対音感」というもので、ひとつの音に対して他の音の高低を識別できる能力です。
たとえば最初の音がドだとわかっていれば次の音がいくつ上の音なのかがわかる、と言えば説明しやすいでしょうか。
歌手が上手に歌っていてもいちいち「今音が外れた」とか気になります。おそらく微妙なずれです。
音と音がピッタリ合っていなければ少しのずれでもわかります。違う楽器同士でも、です。
この能力は「ソルフェージュ」と言われる音階の譜面を初見で歌ったり、吹奏楽で演奏前に行われる「チューニング」という音合わせによってある程度身に着けることができます。
ですから、絶対音感はなくても相対音感は伸ばすことが可能です。
そして相対音感を伸ばすことはピアノを続けていくうえで重要になりますから、早いうちにピアノを始めることは理にかなっているのではないでしょうか。
ピアノのメリット2 脳に良い
なんと、ピアノを習うだけで頭が良くなる!なんて少々乱暴な説もみかけますが…。
強いて言えば情操教育には良いかも知れません。それについても子供それぞれの感性に合っているかどうかだと私は感じます。
それでもやはりピアノの手の動きやピアノ教室に通うことによるメリットは沢山あると思います。
頭が良くなる?
東大生に子供の頃の習い事をきいたところ、ピアノが2位だったそうです。そしてその東大生の約8割が「知能向上にピアノが影響している」と回答したのだそう。
さて、それではピアノを習うと頭が良くなるのでしょうか?
そんな考えでピアノを始めてほしくはない、というのが少々きつい言い方ですが私の感想です。ところで東大生の習い事1位は何だったかと言いますと水泳です。おそらく水泳関係者に言わせれば「水泳をすると頭が良くなる」という見解になるのでは?
お稽古事は他にも習字やそろばんのように脳に良さそうなものがありますし、情操教育の観点からみてもピアノだけではなくバレエやダンスなど表現力を伸ばすお稽古事がたくさんあります。
要は、お稽古事をさせるほど教育熱心な親御さんの子供であるという要因や、教室に通うことで規則正しく余計な遊びの誘惑になびかないという要因が、好成績の子供を育てる結果につながっているのだと思います。
たしかにピアノは脳に良い
頭が良くなる説には否定的な私ですが、何の根拠もなく「頭の良い子に!」といううたい文句に異議を唱えているのであって、ピアノを否定しているわけではありません。
ピアノは両手を使って左右違う指の動きをします。これはピアノレッスンでなければなかなか行わない動作です。
指先は第2の脳と呼ばれ、指先を使うことで自然と脳を刺激し活発化しているのです。
さらに単純に指を動かすだけではなく、まだ小学校にも入っていない子供が楽譜を読み、理解して演奏するのです。
これはピアノ教室に通わなければ普通できないことですね。
ピアノのメリット3 情操教育ができる
ピアノは情操教育に良い、と言われますがそもそも情操教育とはどういった教育なのでしょう?
情操教育とは情緒や感情を育み、心を豊かにするための教育という定義です。
知力や学力を伸ばすのが目的ではなく、人生を豊かにするための教育ということです。
良い音楽を知る体験
ピアノでは「美的情操」という、音楽や芸術を「美しい」と感じる心が育まれます。
これは本当に人生を豊かにしてくれますし、小さい頃から良い音楽に触れることは素晴らしい事です。
小さい頃耳にした音楽がその後の音楽の趣向を左右することは想像できるかと思います。
ピアノを演奏した経験があると、そのピアノ曲のどこが素晴らしいのかを自然と知っています。
たとえば学校に入って吹奏楽部に入ったときや好きな楽器を見つけて楽団に入った時、やはり小さい頃からピアノ曲やクラシックに触れてきた子は感性が違います。
目的は情操教育
私が一番お伝えしたい点は、お子さんをピアノ教室に通わせるのは情操教育のためであってほしい、ということです。
幼少の頃から「ピアノを習いたい!」という明確な意思を持った子はなかなかいません。大抵はお母さんの希望であることが多いのです。
私が気になるのはお母さんも音楽の素晴らしさを知っているかどうかです。
もしお母さんも音楽を大切に思っているならば、コンクールで成績を残すことや他の子との競争にばかり心を支配されることはないと思うからです。
私と同じピアノ教室に通っていた女の子は地元で有名な資産家…というより今でいう反社会勢力のボスのお嬢様。
発表会ではいつも素晴らしい衣装を着て演奏していましたが、本当にピアノが嫌いな様でした。
それでもその子の母親は見栄っ張りで、躍起になってコンクールに出していたのを思い出します。
ピアノを弾くことによって心が荒んでしまっては、子供もピアノもかわいそうです。
子供が長く音楽を愛せるようになるには?
よく、習い事を始めるのに無理強いはいけません。という意見があります。
先述したように子供の気持ちを無視して母親が暴走するのも良くありません。
では、ピアノの英才教育は危険でしょうか?
いいえ。やはり小さい頃から良い音楽に触れる機会を与えられるのは素晴らしい事です。
しっかりお子さんのことを見て正しい判断をすれば大丈夫。
せっかくピアノを始めるのなら音楽の素晴らしさを知ってもらいたいですし、長く続けてほしいですね。
小学校就学前まで
「英才教育」の定義は学校に就学する前から教育を受ける事なんだそうです。
そうなると幼稚園児に「音楽が好き?」と質問することになりますね。大抵の園児は歌や踊りが好きなのではないでしょうか。
「うちの子は音楽が好きみたいだから」というきっかけでピアノ教室に通わせてみるお母さんも多いと思います。
気を付けてあげてほしいのは、しばらくレッスンに通ってますます楽しそうにしているのか、やっぱり違うことをしたがっているのか、という点です。
もしかしたらピアノ教室に行くよりも友達とサッカーしたいかも知れませんし、ピアノではない他の楽器に興味を持っているかも知れません。
まずはレッスンに通い始めた時期からしっかりお子さんの様子に気を付けてあげてください。
この時点で拒否反応があるとしたら、それは感性が合っていないと思って良いかも知れません。
英才教育にこだわらずに、子供の感性に合った習い事を見つけていただくのが良いかと思います。
小学校低学年まで
小学校就学前までは、自分が知っている歌や、上手なお子さんならちょっと楽譜を見ただけで弾けるような曲を演奏することが多く楽しいのですが、小学校低学年といえば地獄の「バイエル」という正直あまり面白くない教本が始まる時期です…。
基礎練習も多く、これを嫌がらずに練習できるようならピアノを続ける意思があるとみて良いかも知れません。
「バイエル」には上巻と下巻があり、少し上のお姉さんが下巻のバイエルを弾いているのに憧れたりしますから、ピアノの上達に熱意があるようなら応援してあげてくださいね。
小学校高学年
早い子だと4年生にはバイエルを卒業して「ブルグミュラー」という練習曲の楽譜を手にすることができます。子供っぽいバイエル教本と違い、青くて大人っぽい楽譜はそれは嬉しいものです。
ただ、この時期を気にしすぎるお母さんが多いのも困ったもので、よその子はもうブルグミュラーに入っているのにうちの子はいつバイエルを終わらせてもらえるんですか!などなど。
お母さんが他の子と比べて追い込むようなことがあってもいけませんし、お子さん自身が他の子と進み具合が違うことを必要以上に気にしていないか、という点も見てあげてください。
ピアノやバイオリンの世界は、このように小さな頃から自然と競争意識が激しくなる環境にあることは否めません。
大事なのは心を豊かにする教育なんだということを今一度確認していただきたい時期です。
そしてそろそろ一日30分程度の適当な練習では、レッスンまでに課題をこなせなくなるほどレベルが上がってきます。もし練習をさぼるようなら理由をきいてあげていただきたいと思います。
実は私が本格的に「ピアノだるいな~」と思い始めたのは小学校5年生頃でしょうか。
「ソナタ」「ソナチネ」などの楽譜を与えられた時期なのですが、このような曲よりもテレビCMで耳にした素敵な曲や好きな歌手の楽譜を演奏することが楽しくなってきたんですね。
ところが自分の趣味とは別にコンクール曲の練習に追われ、ピアノ自体が嫌いになってしまったんです。
もし自由に感情を表現できる演奏を認めてもらえたら、楽しくピアノを続けていられたのでは…と、とても後悔しています。
お母さんの期待に応えようと我慢していませんか?
どの時期にもいえることなのですが、子供は「ピアノを辞めたい」とはなかなか言えないものです。
それは、お母さんがピアノを続けることを期待しているから。
私はレッスンに行くのが嫌で嫌で、どうしたら休めるかと小さいながら懸命に考えて、教室に行くまでの道端で倒れたふりをしてみたことがあるんです。
私は雪国育ちでその日は猛吹雪。誰も通りかかってくれず、あまりの寒さに数分で諦めて起き上がり教室に向かったのですが、あの日自分が相当ピアノが嫌いなんだなと痛感したのを覚えています。
私のように、ピアノを嫌いになって辞めてしまわないよう、どうしてもピアノが感性に合わない子は早く気づいて他の習い事をさせてあげられるよう、お子さんをよく見ていてあげてくださいね。
まとめ
- 小さい頃からピアノを習うことで音感は伸ばすことができます
- ピアノはそれだけで頭が良くなるわけではありませんが脳に良い影響があります
- ピアノは豊かな感情を育むことができ、それこそが目的です
- ピアノを嫌いにならずに音楽を長く愛せることが大事
世界的ピアニストの中にはピアノを始めた時期が他の子より遅い人や、有名な先生についていたわけではない人がいます。
彼らはなぜ有名なピアニストになれたのでしょうか。それは彼らの演奏が人の心を打つからですよね。
技術ではなく、音楽を愛しているから音楽の素晴らしさを聴衆に伝える能力があるんですね。
小さい頃からピアノの英才教育を始めることは、その可能性を子供に与えてあげるということです。
しかし英才教育を始めたからと言ってそれが成功したことにはなりません。
大事なのはそのあと、音楽を嫌いにならないでずっと愛せるように見守ってあげることではないでしょうか。
たくさんの名曲と出逢って、この先のお子さんの人生が豊かになるよう、応援しています!