みなさん、彼岸花についてどんなイメージをお持ちですか?
彼岸花は昔から不吉な花として嫌われてきましたが、見た目は普通に綺麗ですよね。
綺麗な自然を見つけるとついついカメラを向けてしまいますが…待って、彼岸花ってお墓とかに咲いているやつだよね…撮って良いのかな…と思う人もいるでしょう。
そこで、今回は彼岸花の基本データから、不吉な花として忌み嫌われるようになった理由、彼岸花に関する様々な迷信、さらにおすすめの彼岸花絶景スポットまでご紹介します!
彼岸花とは
彼岸花は関東に多く咲くようですが、北海道・北東北からほとんど出ることのない私にとってはあまり身近な花ではないような気がします。
彼岸花ってどんな花なんだろう?と思っている方もいると思うので、まずは彼岸花とは何ぞや、という話から始めたいと思います。
彼岸花という名前について
彼岸花はヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。(めっちゃヒガンバナ…笑)
なぜ「彼岸花」と呼ばれているのかと言いますと、まず一つ目の由来は彼岸が来た頃に咲く花だから。
ほとんどの人はこのイメージを持っているのではないでしょうか。
私も彼岸花と言えば、お彼岸の頃に咲く花というイメージを持っています。
もう一つの由来が、ちょっと怖いのですが、毒を持つ植物であるから。
花ではよく「球根に毒がある」と聞きますが、彼岸花はどの部分にも毒を持っており、「食べると彼岸行き」という意味で「彼岸花」と呼ばれているようです。
そういえば、この前テレビで「ヒガンフグ」なるものを見たのですが、これも「食べたら彼岸行き」という由来を持っていました。(きちんと調理すれば美味しく食べられるそうです)
なんとも不吉な名前ですね…。
曼珠沙華という名前について
彼岸花といえば、曼珠沙華(マンジュシャゲ)とも言いますね。北原白秋作詞・山田耕筰作曲の歌や、山口百恵さんの歌を連想させます。
これはサンスクリット語で「天上に咲く紅い花」を意味し、四華(しけ)の一つだと言います。
四華というのは、天から降るという四種の蓮華花で、曼荼羅華(白花)、摩訶曼荼羅華(大白花)、曼珠沙華(赤花)、摩訶曼珠沙華(大赤花)のことです。
法華経が説かれる際、めでたい前兆として天から雨が降り、その雨を見るものは悪業を離れ、堅い心を柔軟にするといわれています。
ざっくり言うと、曼珠沙華は「めでたいことが起こる兆し」を象徴するので、日本のイメージとは全く違いますね。
カラーバリエーション豊富
真っ赤な花火のようなイメージのある彼岸花ですが、実は白や黄色、最近はピンクやオレンジ色のものまであるようです。
赤い彼岸花は「情熱の花」として有名ですが、墓地に植えられているからでしょうか、「独立」「再会」「あきらめ」「悲しい思い出」などのちょっぴり悲しい花言葉も持っています。
白い彼岸花は「また会う日を楽しみに」「想うはあなた一人」という花言葉を持っており、こちらもお墓参りを連想させますが、赤の彼岸花よりも前向きな感じがします。前を向くためのお墓参りに、白い彼岸花が咲いていると素敵ですね。
綺麗な色とポジティブな花言葉も持つ彼岸花ですが、やはり「不吉な花」としてのイメージは強いので、他人への贈り物には向きません。
自分で愛でる分には綺麗でいいと思います。
なぜ不吉なイメージがついたのか
彼岸花には「死人花」「地獄花」「毒花」「幽霊花」「痺れ花」「蛇花」「剃刀花」「狐花」「捨子花」「疫病花」など物騒な別名が多く存在しており、方言などを含めると千を超えるそう。
なぜこのような呼び名がついてしまったのか…いくつか原因を探っていきたいと思います。
毒を持つから
先ほど軽く触れましたが、彼岸花は全ての種類の花全体に毒を持ちます。
その中でも特に球根の毒が強く、リコリンやガラタミンといった約20種類もの有毒アルカロイドが含まれています。
誤って食べてしまうと、嘔吐、下痢、痙攣、呼吸不全(!)など深刻な症状を起こし、最悪の場合、死に至ります(!!)
なんと触っただけでただれてしまったという人もいるそうなので、注意が必要です。
毒を持っていれば「毒花」「痺れ花」と不吉なイメージを持たれるのは当然のことですが、花に人を近づけないためにわざと不吉なイメージをつけたとも言われています。
例えば、大人が「あの花は危険だからいじってはいけないよ」と子供に注意したとします。しかし、見るなと言われれば見たくなる、触るなと言われれば触りたくなるのが人間です。
そんな好奇心旺盛の子供が誤って彼岸花を口にしてしまったら…迷信ではなく、本当に危険です。
そのため、物騒な呼び名を付けて子供たちに「不吉な花」というイメージを持たせ、人が彼岸花に近付かないようにしたということです。
大切な非常食だから
江戸時代には、彼岸花は飢饉のときなどに食べられる非常食として植えられていました。
「毒があるのに?!」と思ったかもしれませんが、球根の毒は水溶性なので、よく水で洗えば食べることができます。もちろんそのまま食べては危ないのですが。
そして、皆さんご存知かと思いますが、球根はデンプンの塊です。飢饉が起きても、毒抜きした球根で家族が生き延びることができます。
さらに、彼岸花はお米や野菜などの農作物と違い、全草猛毒で年貢の対象外だったため、江戸時代の農民たちはこの彼岸花の球根を食べて生き抜いていたのです。
こういった大切な非常食である彼岸花を盗掘する者もいたようで、それを守るために人々は普段は「毒があるよ!」「縁起が悪い花だから触らない方がいいよ!」と意識的に禁忌してきたようです。
墓地に植えられているから
彼岸花は墓地に咲いてることが多いため、彼岸花=墓地という不吉なイメージがついてしまいました。
なぜ彼岸花が墓地に植えられているのかと言いますと、彼岸花の毒が関係します。
昔は火葬ではなく土葬が多く、亡くなった人をお墓に埋めていました。
しかし、大切なご先祖様がネズミなどの動物に食い荒らされる被害があったのです。
そこで、毒を持つ彼岸花をお墓の近くに植え、動物が近づけないようにしたと言われています。
先ほどもお話ししたように、彼岸花の毒は球根が特に強く、そのため、特にミミズなどの土中の生き物は彼岸花が植えられている近くには寄らなかったそう。
ミミズがいなくなるという事は、それを捕食するモグラ(これが遺体を荒らす可能性のある動物です)がいなくなるので、ご先祖様を守ることができるのです。
また、動物だけでなく人間にもお墓を荒らされる可能性があるので、忌まわしい彼岸花を植えたと考えられています。
ちなみに、墓地だけでなく田んぼのあぜ道でもよく彼岸花を見かけることがありますが、こちらも理由は同じで、田畑の作物を動物から守るために植えられたものが現在も残っているのです。
彼岸の頃に一斉に咲くから
「墓地に植えられているから」という理由とセットで怖いのが、彼岸の頃にぶわっと咲く彼岸花の姿。
墓地でお彼岸の時期に咲くことから、あの世の魂の権化だとか、死人であるなどと考えられていました。それで「死人花」「地獄花」「幽霊花」と呼ばれるようになったのでしょう。
墓地、お彼岸の時期…というだけでも不吉なのに、その咲き方もなんとも言えません。
花だけが一か所に固まって咲き、それらが群生し、毒々しいまでに赤くなります。
お彼岸の時期にそんな花が一斉に咲いたら、「地獄花」と呼ばれてもおかしくないと思います…。
花を咲かすときに葉っぱが無いから
彼岸花は、花を咲かせる際に葉を出しません。
ぱっと見た感じでは気にならないのですが、よく考えるとちょっと珍しいですよね。
彼岸花には「葉見ず花見ず」という呼び名もあり、葉が無いのに花が咲く様子が不気味がられたのだそう。
…うーん、不気味ですかね。私は気になりませんが、感じ方は人それぞれでしょう。
また、葉は親であるのに、花が咲く時期に親である葉がないので捨て子とされ、「捨子花」とも呼ばれているそうです。個人的には、こちらの方が気味が悪いです…。
種ができないから
彼岸花は本来日本に自生していた植物ではなく、稲作と同時に伝わった植物とされているのですが、日本に伝わってきた彼岸花にはほとんど種ができないので、「子孫が絶える」ということでこれも縁起が悪いとされてきました。
今では「子供を産むか産まないかは自由だ」という時代になりましたが、昔は「子孫が絶える」ということはとても忌み嫌われてきたので、当然の事かも知れません。
彼岸花の迷信
さて、ここまで彼岸花について細かくお話しして来たのでそろそろ本題に入りたいところですが、ここでちょっと困ったことが起こりました。
今回は「彼岸花って写真を撮っても大丈夫なの?」という疑問を解決するつもりだったのですが、解決の糸口が全く見つかりません。
私は彼岸花を撮影することについては何とも言えないのでインターネットで調べてみたのですが…
確かに、検索窓に「彼岸花」と入れると「写真 撮ってはいけない」と出てきました。「彼岸花の写真撮影はどうなの?」と思っている人が多い証拠ですね。
しかし、調べても調べても彼岸花の撮影については出てきませんでした。
むしろ、「彼岸花を撮影してきました♪」「彼岸花を上手く撮るコツ!」みたいなブログが多かったので、撮影してはいけないということは無さそうです。
お墓などと違い、彼岸花は勝手に人間に「不吉だ」というレッテルを貼られただけの普通の花ですから、撮影は全く問題ないと思います。
ということで、代わりと言ってはなんですが、彼岸花に関する他の迷信についてもご紹介します。
彼岸花を家の敷地内に植える、または持ち帰ると火事になる
彼岸花を家の敷地内に植えたり、家の中に持って入ると火事になるという迷信があります。
これは、単純に真っ赤な色と花の形が炎のように見えるから、という理由です。
根拠のない迷信なので、ご安心を。
彼岸花を摘むと死者が出る
一見、「彼岸花を摘むと誰かが死んでしまう!」という感じですが「死者が出る」というのは、すでに死んでいる人が出てくる、という意味です。
先ほど「モグラなどに土葬した遺体を掘り起こされるのを防ぐために、お墓の近くに彼岸花を植えた」と説明しましたが、
彼岸花を摘んでしまうとお墓を守るものがなくなり、遺体(死者)が掘り起こされてしまう(出る)ということです。
現在は火葬が一般的なので、これもただの迷信になってしまいました。
彼岸花を摘むと手が腐る
これは彼岸花の毒に関係しています。
実際、彼岸花は毒を持っているので、花を触っただけでかぶれてしまう人も稀にいるようですが、手が腐るというのは少々大袈裟です。
これも先ほどお話ししたとおり、子供たちが誤って彼岸花を食べてしまわないように、親たちが子供を彼岸花から遠ざけるために広まった迷信とされています。
触るくらいならまだ問題ないですが、口にしたら大変ですからね。
美しい彼岸花を見に行こう!
縁起の悪い花として昔は忌み嫌われてきた彼岸花ですが、彼岸花が植えられてきた背景や、不吉なイメージがついた理由を知ると、そんなに不吉なものではないと分かると思います。
毒を持つことは現在も変わりませんが、花としての美しさは素晴らしいです。
そこで、美しい彼岸花を見ることができる名所をご紹介します。
ぜひ彼岸花の写真を撮ってみてくださいね。
彼岸花の見ごろはいつ?
彼岸花は名前の通りお彼岸の頃に咲く花なので、地域によりますが9月下旬~10月上旬あたりに咲きます。
さらに雨が降ると一気に咲き揃う傾向にあるようなので、満開の彼岸花を見に行く際は雨が降った後が良さそうです。
花もちはあまり長い方ではなく、見ごろは一週間くらいになります。
埼玉県 日高市
日高市では、9月下旬から10月上旬の間、「ひだか巾着田曼珠沙華まつり」を開催しています。
ここは日高市内を流れる清流、高麗川の蛇行によって長い年月をかけてつくられ、水流の形が巾着の形に似ていることから、巾着田と呼ばれているそうです。
雑木林の中に咲く大規模な彼岸花群生地は全国的にも珍しく、日本最大級の彼岸花の名所になっています。
埼玉県 幸手市
こちらも埼玉県。ここでは9月中旬から10月上旬まで「さって曼珠沙華祭り」が開かれており、土手一面に咲く約数百万本の彼岸花は圧巻です。
このたくさんの彼岸花は市民ボランティアの方の協力によって管理されているそう。
希少な白や黄色の彼岸花も咲くので、撮影スポットとして人気です。
堤の中央付近に「峠の茶屋」があり、祭り期間中は自家製パンや幸手市の物産を楽しむことができます。
神奈川県 日向薬師 彼岸花の里
日向薬師は日本三薬師の一つであり、参拝やハイキングのために多くの人が訪れます。
そんな日向薬師は彼岸花の名所でもあります。
「日向薬師の彼岸花」は、伊勢原市の日向薬師付近に自生している彼岸花の総称であり、その自生地は日向地区、藤野地区、洗水地区など9か所に及びます。
田園の散策路に沿って歩くと、先人が田んぼを守るために植えた美しい彼岸花を楽しむことができます。
のどかな田園風景と真っ赤な彼岸花のコラボレーションは、ノスタルジックな気分に浸ることができます。
まとめ
- 彼岸花には様々な意味が込められており、素敵な花言葉も持ちます
- 彼岸花=不吉というイメージが付いた背景には、先人の知恵があります
- 写真撮影含め、彼岸花の迷信は現在は気にすることはありません
- 美しい彼岸花を見に、絶景スポットを訪れてみては
現代は飽食の時代と呼ばれるほどに食料が溢れているので私たちはつい忘れてしまうのですが、江戸時代は度重なる飢饉や重い年貢などで、満足に食料を得ることができませんでした。
ですから、大切な農作物を害獣から守ってくれて、非常時には食料にもなる年貢の対象外である彼岸花は救いの花です。
また、大切なご先祖様をネズミやモグラから守ってくれる花でもありました。
現在は田畑のあぜ道や墓地などで何気なく見かける彼岸花ですが、勝手に生えたのではなく、昔の人が考えて植えたものであり、意味を持って咲いているという事を忘れずにいたいですね。
毒を持つ彼岸花ですが、どこかで見かけたらその美しい姿を愛でてあげてください。