2018年にアニメが放送されたバナナフィッシュを見て、内容に衝撃を受ける人が多くいました。
それは展開されるストーリーと主人公のアッシュの過去が現代に放送するにしてはなかなか挑戦的な内容であったからです。
原作は1985年のものですが、それを考えると余計に挑戦的な話である言えます。
今回はそのバナナフィッシュのアッシュについて、ある程度ネタバレを挟みつつ解説していくものになります。
アッシュ・リンクスというキャラクター
本名はアスラン・ジェイド・カーレンリース。
ニューヨークスラム外のストリートキッズを束ねるボス。
金髪、緑の瞳で並外れて整った用紙とIQ180の頭脳と幼いころから身に付けた射撃能力を含む戦闘技術により、圧倒的なカリスマ性を持っています。
性格は自らが傷つけられて死ぬことを恐れず、常に冷酷非情な強い態度でいます。
その反面、信頼を置く人に対して危害が及んだり、死ぬことを常に恐れていて、自分への嫌悪感や罪悪感を抱えています。
兄であるグリフィンを廃人同然にした「バナナフィッシュ」の謎を追う中で、唯一気を許せるようになる奥村英二や仲間たちと出会い、過去に因縁があるディノと敵対していくことになります。
イメージモデルとなったのは、当初はテニス選手のステファン・エドベリで、途中からはリヴァー・フェニックスになりました。
壮絶な過去と物語中で繰り返される悲劇
アッシュの性格が形作られたのは過去にうけた精神的・肉体的外傷によるものです。
男性として美貌を持つアッシュはそのせいで不幸にも性犯罪の対象として見られることになります。
幼少期
アッシュが8歳の時、野球のコーチに強姦された揚げ句、その原因を自分になすりつけられます。
この頃から大人への不信感を抱くようになります。
ディノ・フランシス・ゴルツィネとの出会い
マフィアのボスであるディノによってアッシュは少年売春の店で男娼として商売に利用されました。
客や店の人間からも強姦され、ディノから性的玩具として扱われる日々が続きました。
そんな中、アッシュのカリスマ性を見抜いたディノは自分の後継者として、射撃能力などを教え込みます。
その後も
刑務所に捕まった時も囚人たちから性の対象として見られ、強姦されることになります。
ただ、その時も過去の経験からどのように対応するかわかっていたり、強姦されることは殺されないよりマシだと言って境遇に慣れていることを自ら語っています。
アッシュだけはない現実
物語の終盤ではディノが少年売春の店があることや少年の性的濫用について世間に知らせされ、政府の関係者も逮捕されるような出来事が起こります。
この世界において少年の性的犯罪は常習的なものであり、アッシュの出会った被害は何ら珍しくもないものだったのです。
バナナフィッシュが描く世界
バナナフィッシュの描写は、男性に対する性犯罪とは切っても切れないものです。
原作が連載されていた当時は、日本で男性に対する性犯罪への刑法の適用はされていない時代でした。
現在では男性も対象になっていますが、世界的に見れば、日本の性犯罪に対する刑罰はあやふやなところがあると見られることも多く、女性も含む性犯罪に対する意識はまだまだ問題とされていることです。
この作品は問題提起のために作られたわけではありませんが、そのような意識がない時代の中でセンセーショナルな内容のこの作品は単なる少女漫画として見る以上の価値が含まれているのだと思います。
また、バナナフィッシュが描いているのはそれだけではなく、性別を越えた愛というものも描いています。
アッシュと英二の関係は、英二が無償の愛によってアッシュを気にかけ、アッシュは今までにない経験から信頼し、英二を守ろうとします。
それは、恋愛とも友情とも言えない、魂で繋がった愛の形です。
ストーリー上ではそれがアッシュの弱点をして狙われることになりますが、壮絶な過去の中では出会うことのなかったその関係を守ろうとするアッシュの姿が、キャラクターの魅力となり、作品の見どころになっているのだと思います。
まとめ
今回はアッシュの過去について見ていきました。
アニメの放送でもなるべく原作のテイストがかなり残ったまま放送されているので、初見の人は衝撃的なものだったと思います。
単純に架空のストーリーとして楽しむのも良いですが、バナナフィッシュに潜む問題が、現実にも考えられるものとして見ると、また違った感想が生まれるかもしれません。