早速ですが、ヘラクレイストスやパルメニデスと言われれば何を思い浮かべますか?
「初めて聞いた」「ゲームやアニメでしか聞いたことがない」「大学の授業で聞いたがイマイチ誰か覚えていない」
など、パッとしないと思います。
「万物は流転する」「万物は不動である」このこの言葉の意味がわかるだろうか?
これは彼らの最も対立していると言われる命題です。
今回は2人の経歴やこの命題について詳しく見ていきましょう。
2人の経歴と関係性
ヘラクレイストス
・ギリシア人の哲学者、自然哲学者
・紀元前540年ごろ
・今回お話する、「万物は流転する」と唱えた人
・「暗い哲学者」「泣く哲学者」と呼ばれる
パルメニデス
・古代ギリシアの哲学者
・紀元前500年ごろ
・感覚より理性を信じる合理主義の祖であると考えられている。
・ヘラクレイストスと対立する「万物は不動である」を唱えた人。
主張する意見の対立
哲学を詳しく勉強していくと基本的に2人の意見の対立について考えなければなりません。
「万物は流転する」「万物は不動である」この意味から見ていきましょう。
まず万物とは「この世の全てのもの」を指していて、「流転」というのは「絶えず変化していく」という意味を持っています。
つまり、この段階では「万物は流転する」=「この世の全てのものは絶えず変わり続ける」、そして「万物は不動である」はその逆
と解釈しておいてください。
イマイチピンとこない人が多いかと思うので具体例で見ていきましょう。
まず、緩やかな流れの川を想像してみてください。
その川は絶えず流れており、水の形状として見ると変化している。
ヘラクレイストスの意見はこれに当てはまります。
しかしパルメニデスの意見はその真逆で、人間の目にはその川はたえず流れているように見えているだけで、見た目で判断してはならないという主張になります。
あまり真逆って感じがしませんよね。
詳しく見ると分かります。
2人の主張から見ていきましょう。
ヘラクレイストスの主張
ヘラクレイストスの主張の方が理解しやすいため先に見ていきましょう。
その主張とは、自然界は絶えず変化していると考えるが、その背後には変化しないもの(ロゴス)を見ています。
そしてロゴス=火であると唱え、万物の根源は火であるとしました。
学問的な表現が多いのですが、分かりやすくいうと、「燃焼」という現象は火の大きさや形が変わり続けますが、その背景では一定の油や一定の薪が消費され、一定の明るさを保つという変化しないものがあり、変化と一定(哲学的には保存と呼ぶ)が同時進行しているということです。
その変化しないものを哲学的に「ロゴス」と呼んでいるのです。
そして水などの他の物質は全て火から生ずると言っているのですね。
パルメニデスの主張
感覚で捉えられる世界は生成変化を続けるがそもそも「変化」とは在るものが無いものになることであり、無いものが在るものになることである。
つまり、理性で考えれば「無」から「有」が生じたり、「有」から「無」になるのは矛盾である。
感覚よりも理性に信をおき真に在るものは不変だと考えた。
こちらもわかりやすく見ていきましょう。
実際現実世界は変化しているはずです。しかし植物の成長を目で見てわかるものだろうか?
人間の感覚は所詮そのようなもので感覚で世界を理解するのではなく理性で世界を理解しようとしたのです。
そして若干強引にも思えるのですがこの「万物不動説」と「目に見える自然界との不整合」に対して、「感覚は私たちに世界の虚像を伝える」と結論づけたのです。
ざっくり言うと変化=偽物であると結論づけたのですね。
当時の世界で受け入れられたのは?
当時どちらが受け入れられたかと言うとパルミニデスの「万物不動派」です。
おそらくですが「プラトン」の「イデア」の考え方に近いものがあったためと言われています。
確かにモノの本当の姿はイデア界にのみ存在していると言うある意味神格的な要素が近しいところがありますね。
まとめ
パルメニデスとヘラクレイトスの登場によって思想界は真っ二つに割れました。
パルメニデスの万物不動説派と万物流転派の考えは現在も議論されるほどの内容です。
それだけ価値がある哲学なので教養として覚えておきたいひとつですね。