「立て付け」。
皆さんはこの言葉を聞いて、何を思い浮かべますか?
建造物?扉や障子の取り付け具合などでしょうか。
「立て付け」という単語を見ると、そう思い浮かべる人が多いかもしれませんが…
実はその場合だと、この漢字は間違った表記になっています。
この記事ではそんな「立て付け」の単語に関わるあれこれを見ていきます。
「立て付け」の意味と実際の表記
「立て付け」という単語ですが、三つの意味で使われることがあります。
立て付けの意味①
一つ目は「続けざまにすること、立て続け」という意味での「立て付け」です。
「立て付けにお酒を飲む」といったような例文を作ることができます。
立て付けの意味②
二つ目は漢字の誤用としての「立て付け」です。
本来の表記では「建て付け」と書く方が正しいものになります。
「建て付け」は「扉や障子などが建物に収まっていること」を意味する言葉で、元々は建築用語として使われていたもの。
「扉の建て付けが悪い」といったよう例文を作ることができます。
そして、この意味から派生して日本のビジネス用語では「組織やプロジェクトの構成、枠組み、仕様」という意味で用いられることもあります。
立て付けの意味③
三つ目は「まっすぐにする」という意味での「立て付け」。
この場合は「(物を)立てて付ける」という言葉を省略したものです。
皆さんの「立て付け」は正しく使っていますか?
この中で最も使われやすいのは意外にも二つ目の誤用の「立て付け」です。
本来の表記の「建」が大きな建築物をイメージすることが多いでしょうね。
「扉」などの小さな範囲で取り付けているものについては、「立」の方が合っているように思ってしまうのもしかたありません。
また、派生の意味としてあるビジネス用語の「たてつけ」も、
組織やプロジェクトを作ることを「立案」や「立証」という単語で表現することから、元の「建」よりも「立」の方が言葉として合っているように感じてしまう人が多くなっています。
現在は辞書によって定めているものは違っていきますが、「建て付け」と「立て付け」は同じ意味の言葉や表記ゆれとして見られるような場合もあります。
類似する「スキーム」と「座組み」
ビジネス用語としての「建て付け」に類似する単語として「スキーム」というものがあります。
英語における「scheme(スキーム)」は「計画、構想、悪だくみ、陰謀」などの意味がありますが、
ビジネス用語では「枠組みを持った計画」や「計画を伴った枠組み」という意味を表します。
例文を挙げると
といった文を作ることができます。
この例文の使い方のようにスキームは「課金スキーム」「決済スキーム」「運用スキーム」といったように目的の名詞を伴って使われます。
「建て付け」と「スキーム」の違い
意味がなんとなくわかりましたでしょうか?
では次は「建て付け」と「スキーム」の2つを見ていきましょう。
「枠組み」という意味では似たような単語に見えますが、
- 「スキーム」では計画などを立てる前の状態も指す
- 「建て付け」では既にある計画や仕組みのみを指している
という時間的な違いがあります。
ただし、「建て付け」を計画を立てる前の意味として使わない事もないので、この違いは曖昧なものになっています。
「座組み」も類似語
また、「組織やプロジェクトの構成」という意味では「座組み」も「建て付け」と似たような言葉です。
「座組み」とは「歌舞伎や客席、演劇などの出演者の構成」という意味の言葉です。
この言葉が転じてビジネス用語では「プロジェクトに参加するメンバー構成」や「プロジェクト体制」の意味で使われることがあります。
これは「建て付け」とほとんど同様の意味の言葉として見ることができます。
日本のビジネス用語の元ネタは必ずしも意味に反映されない
「建て付け」や「座組み」から見ると、ビジネス用語は他の業界で使われている言葉を転化させて使っているものがいくつかあることが伺えますね。
ビジネス用語と言われると、どちらかといえばカタカナ語の長い単語を思い浮かべることが多いかもしれませんが、こちらに関しては英語の意味を知っていれば何となく理解できるものです。
反対に別の業界から取り入れた日本語であると、その業界の意味がわかっても転化された意味まで読み取れないことがあります。
なので、真に難しいのはカタカナ語よりもこのような転化単語のビジネス用語です。
これは日本人だけでなく、外国人も理解が難しい単語でしょうね…。
意味を知っていても自分で使う場合は、他の単語に置き換えられるようにしておいた方が無難かもしれません。
まとめ
- 「立て付け」は辞書的に3つの意味があり、誤用されている部分がある
- ビジネス用語では「スキーム」「座組み」も類似語。
- 日本のビジネス用語は他業種からの転化が多く、元ネタを反映するとは限らない
今回は「立て付け」という単語についてまとめていきました。
何気なく使っていても実は間違っていると気付かない人が多いので、「立て付け」という表記はもう浸透しているものなのかもしれません。
しかし、何も知らずに使っているのも勿体ないので、今回の本来の表記や類義語を覚えて、知識として身に付けておきましょう。