皆さん「ソクラテス」という人をご存知ですか?
一度は「無知の知」という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、その生みの親ですね。
そんなソクラテスがしていた知恵の探求の方式がソクラテス式問答法と呼ばれるものです。
この方法は一度教えられてもなかなかとっつきにくいかもしれません。
今回は問答の狙いと実際もちいるときに参考してもらいたい例をご紹介しましょう。
ソクラテス式問答法とは何か
結論から言うと、議論ではなく対話によって相手に無知の知を悟らせるといったものです。
もっと簡単に言うと、相手が正しいと思って語っている命題の反対意見を主張し、相手に「自分は無知だ」と悟らせることです。
ソクラテス式問答法を使うことによるメリットは、
- 相手の悩みの内容に対する感情や思考を解明し、より高次なものにする。
- その相手の悩みに対して正しい努力の仕方を気づかせる。
といったもの。
詳しく話すと、その悩みにおいて
- 相手は悲しいのか
- 怒っているのか
- また実は楽しいのではないか
など、対話によって本人の持っている感情を正確に解明します。
それに対して、正しい思考と正しい努力の方向性を気づかせます。
一見よくわからないかもしれませんが、下記に具体例を挙げているのでご覧ください。
ソクラテス問答法の真の狙い
しかし、一見論破された相手はソクラテスの事がうっとうしいと思いそうですよね(笑)
ただ、この問答法は論破とか言いくるめるとかのニュアンスからは少しずれるのです。
論破ではなく「対話」による「理解」ですので、悩みの本質的な部分を自分で見つけるといったようになります。
そして当時ソクラテスは人類で一番知恵がある人間とまで言われていました。
なので反対意見を主張されても納得がいったのではないでしょうか。
例えばあなたが(仕事、勉強、スポーツなんでもいいので優れていると思う)尊敬する先輩にある命題を持ちかけたところ反対意見の方が正しいと言われれば納得いきますよね?
当時の人たちもそうだったのではないでしょうか。
そしてこの問答法は議論ではなく、「対話」という位置付けになっています。
悩みの核心を教えるのではなく命題をもってきた本人に自ら悩みの核心を気づかせるというものですね。
ソクラテス式問答法の例
具体的な例を見ていきましょう。
今回は「仕事で失敗し上司に怒られ悲しい」という命題にこの問答法を用いて見ていきましょう。
自:仕事で失敗し上司に怒られて悲しいのです。
相:どのような失敗をしたのですか?
自:重要な書類を間違えて破棄していしまいました。それで上司にこっぴどく怒られて、、。
相:そうなんですか。なぜ悲しいのですか?
自:そりゃあ、怒られたら誰でも悲しいでしょう。今度からは失敗をしないよう努力します。
相:では過去に同じ上司に怒られたことはありますか?
自:ありますね。会社の機材を壊してしまいまして、、。その頃は新人だったのであまり怒られはしませんでしたがやはり悲しかったです。
相:その時の感情と今の感情で違う点はありますか?
自:その時は今と違って「仕方ない」という気持ちの方が強かったですね。周りのみんなもそうやって言ってくれたので。
相:今回の失敗は何故「仕方ない」と思えないのですか?
自:もう仕事のも慣れ、そんな些細な失敗は許されないでしょう。
相:上司のどのようなところを尊敬していますか?
自:部下である私や同僚を心から信頼し頼ってくれるところですね。その信頼を裏切ったと思うと悲しいです。
相:「怒られたのが悲しい」のですか?「信頼を失ったのが悲しい」のですか?
自:自分が悲しいのは「怒られたから悲しい」のではなく「尊敬する上司の信頼を失ったから悲しい」のですね!怒られないように努力するのではなく、信頼を取り戻すために努力しなければなりませんね!
このように、
悩みの本質が「怒られたから悲しい」→怒られないよう努力する
という点から
「信頼を失って悲しい」→信頼を取り戻すよう努力する
に転換しています。
相談相手は自分がなぜ悲しいのかを正しく理解し、正しい努力の仕方に気づけました。
これがソクラテス式問答法です。
ソクラテス式問答法は誘導尋問?
「ちょっと誘導尋問みたい」って思った方もいらっしゃるかもしれませんが、誘導尋問とは少し違います。
何度も繰り返しますが、これは「対話」です。
相手と話すのが目的で議論や論破、尋問とは全く別のものです。
もし誘導尋問のようにするのであれば、一番最初に「本当は上司の信頼を失ったから悲しいのです」と答えを持って対話に臨みます。
しかし、この問答法は答えを事前に用意しません。
対話の中で本人が見つけていくというやり方なのですね。
まとめ
覚えて使いこなすには少し難しいですが、ソクラテス式問答法は現代でも実用性が高いです。
使い方を覚え、多くの人の悩み解決の糸口となれる人間を目指しましょう^^