山菜取りやタケノコ取りで山に入ってイノシシに襲われるという事例はよく耳にしますが、冬山ではどうなのでしょう?
冬もイノシシは活動しているのか?
クマのように冬眠しているのか?
あまり生態を知られていないイノシシが一年をどう過ごしているのか調べてみました。
冬眠していない動物も多数存在する冬山の危険回避についても知っておきましょう。
イノシシは冬眠する?
冬山で冬眠する動物といえば、クマやリスが思い浮かびます。
クマは冬眠明けはお腹が空いていて危険、などの情報をよく目にしますよね。
クマと同等に山で遭遇すると危険とされているのがイノシシですが、イノシシもまた冬眠明けが危険なのでしょうか?
しかし、そう考えるとイノシシが冬眠するイメージがあまりないのですが…実際イノシシは冬眠するのでしょうか?
イノシシの生息地域
イノシシは日本国内に二種類生息しています。
本州・四国・九州に生息している二ホンイノシシと、沖縄の諸島に生息しているリュウキュウイノシシです。
あれ?
北海道には生息していないのですね。
さらに分布図を調べてみると北東北にも生息していないようです。
ということは、あまり寒い地域にイノシシは生息できないということがわかります。
しかし、近年は暖冬による小雪化の影響で,
北関東や南東北の生息地域が拡大している傾向にあるようです。
イノシシは何を食べているの?
イノシシは雑食性です。
植物性のエサはヤマイモなどの根茎や葉、果実など。
動物性のエサは昆虫類やミミズ、カエルなどですが、7割近くが植物性のエサを食べて生きているようです。
その他、人間が食べるものも好きなのでよく畑を荒らして怒られているのですね。
さて、季節別のエサを調べてみると、春はタケノコ、秋は果実や動物質。冬は植物の根や塊茎とあります。
…ということは、冬もエサを食べているということですね。
そういえば分布図をみても暖かい地域に生息しているということは、冬山でエサがなく冬眠しなければいけない動物と違い、冬眠する必要はないですね!
冬眠明けのように危険な時期はある?
イノシシが冬眠しないことはわかりましたが、やはり山で遭遇すると危険であることは事実です。
イノシシは人間を捕食対象としていませんし人を襲うわけではありませんが、イノシシによる事故が多いのは本来臆病なイノシシが驚いて突進してくることによる怪我というわけです。
それでは、冬眠明けのようにイノシシが過敏になっている時期があるのかどうか調べてみましょう。
発情期
イノシシにとって発情期は神経過敏な時期です。
交尾期は12月・1月あたりから約3か月間のようです。
冬眠しているのでは?と思っていた時期、実はイノシシにとっては発情期で活動が活発なんですね(笑)
ちなみに妊娠期間は約4か月です。
妊娠中は人間をはじめどの動物でも神経過敏ですよね。
身を守るために必死なのですから、臆病なイノシシを驚かせないように気を付けましょう。
出産後
イノシシの出産は通常春に一度です。
春の出産に失敗したメスは夏に発情して秋に出産する場合もあるようです。
ちなみにリュウキュウイノシシには春と秋2回の出産期があります。
イノシシの赤ちゃんといえば背中に縞模様のあるミニブタのような可愛いウリボウ達ですね。平均4.5頭ほどのウリボウを産むようです。
子連れのイノシシに注意する点は可愛いウリボウにあります。
ウリボウだけを見つけた人間が、可愛いからと言って近づいた瞬間に近くにいた母イノシシの怒りをかって怪我をするケースもあります。
ウリボウの近くには必ず母イノシシが隠れていると思いましょう。
イノシシ狩りの時期
クマやイノシシなどを狩猟できる時期は都道府県や対象動物によっても変わるようですが、現行の規定では基本的に11月15日~2月15日が狩猟期間となっているようです。
この時期、猟師さんがはいってイノシシを追っている山もあると思います。
本来、害獣駆除の目的で許可が出ているのですが、純粋にイノシシ猟をしている団体などもあるようです。
もちろん猟師さんたちは資格も持っていて山の歩き方も知っていますが、気を付けるポイントは猟師に追われている時期のイノシシが危険だということです。
イノシシ狩りの方法として犬を使ってイノシシを追い、猟銃で仕留める方法があります。
追われているイノシシが興奮状態なのは安易に理解できますよね。
イノシシ狩りは犬で追い込む方法の他に、イノシシと犬を喧嘩させて気をひかせて撃つ方法もあり、犬に襲われて怪我をしているイノシシも多くいます。
手負いのイノシシは警戒心も強いですし興奮状態です。そんな状態でばったり出くわしたりしたら大変危険です。
山で猟銃の音が響いている時期はイノシシ狩りをしていますので、あまり近づかない方が安全です。
入山の際に確認しておくと良いですね。
冬眠しない危険な野生動物
イノシシのように冬眠しないで冬山を歩き回る動物で、注意すべき動物をご紹介しておきます。
冬山はエサが乏しく、どの動物もお腹が空いていることが多いので特に注意が必要です。
サル
私たち人間に最も近く、大変頭の良いサルですが、やはり山で遭遇する野生のサルは動物園の猿山で暮らすサルとは目が違います…。
体は小さいですが鋭い爪や牙を持っていますし、抜群の身体能力で飛び掛かられたら避けようがありません。
群れで囲んでくるのも怖いです。
大抵、人の持っている食料が目的なので食べ物を投げて気を引きながら逃亡するのが一番です。
タヌキ
タヌキはのんびり、おっとりしたイメージがあるため危険な動物という認識は低いのですが、やはり野生動物です。
タヌキはイヌ科ですが臆病で警戒心が非常に強く、意外に人間と共存できる性格ではないのです。
場合によっては凶暴で攻撃的になりますし、雑食性なのでエサがなくなると人里におりて畑を荒らしたりもします。見た目がかわいいので油断すると怪我をさせられる可能性がありますよ。
また、臆病で身を守るために攻撃的になるところがイノシシとよく似ています。
ちなみにキツネは最初こそ警戒心がありますが、人を危険ではないと判断すると意外に大胆に近寄ってきます。
とても可愛らしいので触りたくなりますが、病気を持っている可能性がありますので我慢しましょうね。
冬眠できていないクマ
もともと冬眠するはずなのに冬眠できずに冬山を歩き回っている野生動物も増えています。
主な原因はエサ不足。
そもそも冬眠する動物は、エサが取りにくい冬場を冬眠という方法で春まで乗り切る目的で冬眠します。
エサの豊富な時期にたっぷり栄養をとって、春まで眠ることで消費を最小限に抑えるのです。
しかし近年は人間の生活によって野生動物の居場所が狭められ、本来エサが豊富なはずの秋でさえ充分なエサがないという状況に陥っています。
そのため、お腹いっぱいで冬眠することができなかった野生動物がお腹を空かせて山を歩き回るわけです。
当然、冬山にエサはありませんから、エサを求めて人里へおりてきますよね。
一番怖いのはやはり熊でしょう。
「羆嵐(ひぐまあらし)」という小説にもなった北海道三毛別(さんけべつ)でのヒグマによる襲撃事件は、本来冬眠しているはずの冬に人里を襲った有名な事例です。
このヒグマは大変大きかったため、冬眠できる穴倉が見つからず冬眠できなかったのではという説もあります。
このようなクマは「穴無し」と呼ばれ、気性も荒く大変危険です。
冬山に入るときの注意
冬山に入る際には遭難以外にも野生動物との遭遇の危険があります。
ここでは、活動している野生動物に遭遇しないような知恵をご紹介します。
動物たちだって人間には会いたくないのです。
人間の方が気を使ってあげましょう。
単独行動しない
冬山にはいるときは必ず複数の人数で行動することが基本です。
野生動物に遭遇する危険を回避するためでもありますし、遭難の可能性を回避するためでもあります。
単独で行動するより仲間と行動していれば会話もしますし、気配も大きくなります。
できれば大きな音をたてながら歩けば野生動物に存在を知らせることができますから、突然野生動物に遭遇するというリスクを下げることが可能です。
野生動物の痕跡に注意
山歩きに慣れている人は野生動物が近くにいるかどうかに敏感で、知識もあります。
知識は身を守ってくれますし、野生動物の住処である冬山に立ち入る際の最低限のマナーではないでしょうか。
野生動物の痕跡として見つけやすいのは、木で爪を削った痕跡ですとか地面を掘り起こした痕跡です。
さらに知識があれば何の動物が近くにいるのか、どのくらい前につけられた痕跡なのか見分けることもできますが、一番安全なのは「痕跡をみつけたら退散する」ことです。
イノシシなどは物陰に隠れて行動していますから、もしかしたら近くにいてばったり遭遇する可能性もありますよ。
まとめ
- イノシシは暖かい地域に生息して雑食なので冬眠する必要がありません
- 発情期や出産後、イノシシ狩りの時期は警戒心が強く危険です
- イノシシのように冬眠しない野生動物の危険
- 冬山に入るときは単独行動を避け、動物の痕跡を見つけたら退散しましょう
イノシシは、冬のあいだも一生懸命山で生きているのですね。
私は「冬眠」に強い憧れを持っていて、生まれ変わったらリスやクマなどの冬眠する動物になりたいと本気で思っていました。
冬眠るために秋の間おいしいものをたくさん食べる…なんて幸せそう!
しかし、今回イノシシの冬眠や暮らしについて調べたところ、冬山で動物たちが必死に生きる姿に少し自分の怠け者具合を反省しました。
山は本来動物たちの住処です。我々人間が山にお邪魔するときはできればお互いに遭遇しないよう、気を付けてあげたいですね。
冬眠している動物も、冬眠せずに頑張っている動物もそっとしておいてあげたいものです。