意識高い系サラリーマンがよく使っていそうな言葉
「ボーダーレス化しましょう!」
「グローバルなものの考え方が必要です!」
など…最近頻繁に目にしますよね。
果たして、みなさん意味をちゃんとわかって使っているのでしょうか…?
もちろん大体はわかっていると思いますが何でもかんでも「ボーダーレス」や「グローバル」という言葉を羅列すればできる企業戦士みたいな印象がありませんか?
正直、私はボーダーレス化とグローバル化の意味の違いがわかりません。
発信する側も受信する側も正しい意味がわかっていなければ、おかしなやりとりになってしまいそうですね。
そこで「ボーダーレス化とは何か?」「グローバル化とは何か?」を説明できるように詳しく勉強してみたいと思います。
ボーダーレス化とは
まずは「ボーダーレス化」とはどういうことなのか探ってみましょう。
印象としては、世界各国が様々な分野で隔たりをなくすといった感じでしょうか。
例えば海外旅行に行っても吉野家がある!どこの国にもマクドナルドがある!
というように、実はそんな身近なところにもボーダーレス化は影響しているようです。
ボーダーレスの意味
「ボーダーレス」とは境界がないこと、国境がないことを意味する言葉です。
また、そこから発展した意味としてジャンルに分けられないこと。
つまり境界が消えたり薄れたりした状態をボーダーレスといいます。
ですから「ボーダーレス化」とはそのような状態に変わることを意味しています。
もちろん実際に国境がなくなるわけではありませんが、あたかも国境のない世界に移行しているようなイメージということですね。
特に最近は国境という意味にとらわれず、経済活動や情報通信、さらにはメディアや環境問題など多様な事象や活動について使われています。
ボーダーレス化の背景
ボーダーレス化とは経済活動や情報、文化などが国境を越えて世界規模に広がり国籍が意味をなさないほど国際的に広がっている現象のことです。
世界的にボーダーレス化が進んでいる背景には、インターネットなどの情報技術の発達や交通手段・輸送手段の発達、企業による海外現地生産の推進などにより、国境による制約がほどけてきたという流れが影響しています。
つまり企業が自国だけではなく世界に目を向けはじめたことや、個人も世界規模の情報を求めはじめたことによる自然な流れというわけですね。
ボーダーレス・エコノミー
「ボーダーレス」は「ボーダーレス・エコノミー」という言葉から多用されるようになった言葉です。
ボーダーレス・エコノミーとは経済面でしだいに国境がなくなってくる現象のことを指します。
盛んな貿易交流、企業の多国籍化、金融市場の世界的な統合などにより、国境は実質的に無意味なものになりつつあります。
ボーダーレス化が進むと税制、企業への法規制、製品企画、基準認証制度などを各国同一化する必要が出てきますので、ボーダーレス・エコノミーのもとでは経済政策面での国際協調が必要不可欠となります。
企業間では進んでいる、または進めたいボーダーレス・エコノミーですが果たして国同士の強調を進めるのは一筋縄ではいかないようですね。
グローバル化との違いは?
ボーダーレス化の意味をつかんだので、次はグローバル化との違いを探っていきましょう。
正直何が違うのかわからないという方も多いと思いますが、それもそのはず。
調べてみると大きな意味での違いはほぼないような…。
しかし、違う言葉ですから違いはあるのです。使い方の問題かも知れません。
使い方を間違わないように、意味を知っておくと良いですよ。
グローバル化とは
まずは比較対象の「グローバル化」の意味を調べましょう。
グローバル化とは政治、経済、文化など様々な分野において国や地域の垣根を超え、地球規模で資本や情報のやり取りが行われることを指します。
短く表現すると、人・物・金・情報が国境を越えて結びつき、世界の一体化が進むことです。
似た言葉で「グローバリゼーション」がありますが、こちらは地球規模で様々な変化が起こることを指します。
ボーダーレス化とグローバル化はどこが違うのか?
これまで読んでみて「ボーダーレス化とグローバル化ってやはり一緒なのでは?」と疑問が深まりますね。
ここで「ボーダーレス」と「グローバル」の意味をシンプルに考えましょう。
「ボーダーレス」は前述したように「国境がない、境界がない」という意味。「グローバル」の意味は「地球的」です。
難しい言葉を使わず解釈するには「ボーダーレス化」のほうは「各分野においてスムーズな流れを作るために決まり事を変えたり壁をとっぱらってオープンにしようよ!」ということ。
「グローバル化」は「世界が一つになって地球規模で物事を進めようよ!」というニュアンスになるのではないでしょうか。
そしてこれを「オープンにして地球規模になろう!」と言葉を短くしてみると…
「ボーダーレス化して、グローバル化しよう!」となるわけです。これで違いが理解できるかと思います。
どちらもあまりにも様々な分野で使う言葉ですので、日本語に訳すと「国際的規模」という一言でまとまってしまうため使い分けが難しいんですね。
しかしあえてカタカナを使うのならやはり「ボーダーレス」「グローバル」という英語のそれぞれの意味を正しいニュアンスで理解しておくべきでしょう。
「ボーダーレス」と「グローバル」を置き換えてもいい?
なんとなくボーダーレスとグローバルの違いがぼんやり見えてきたでしょうか。
ところで「グローバル企業」や「グローバル人材」という言葉はよく耳にするのに「ボーダーレス企業」「ボーダーレス人材」という言葉は使われませんね。
これはなぜでしょう?
「ボーダー」という言葉は本来「国境」を指しますが、もっと広い意味の印象がありませんか?
「国境」というよりも「境目」という解釈が日本人には浸透しているため、例えば「ボーダーレス人材」という言葉を目にしたとき「ボーダー」自体が何なのかが分からなければどんな人材を指しているのか理解できません。
もしかしたら「ボーダー」は上司と部下の垣根のことを指しているのかも知れませんし、男女の性の違いを指しているのかもしれませんよね。
「ボーダー=国境」という訳し方に慣れていない日本人には誤解を与える可能性があるので安易に「ボーダーレス」と「グローバル」を置き換えるのは避けた方が良さそうです。
ボーダーレス化の影響
それではボーダーレス化してグローバル化することによってどんな分野にどのような影響が出ているのか調べてみましょう。
近年当たり前だと思っていたことも「そうか!これもボーダーレス化の影響なんだ」と改めて気づくこともありますよ。
流行
私たちが身近に感じられるボーダーレス化が文化などの流行です。
身近な例をあげると、日本で人気の漫画がフランスやロシアでも大人気なこと。
韓国で流行っているデザートや食べ物が日本でも流行ること。
パリコレで発表されたものやハリウッド女優が着用したファッションが世界的に流行ること。
こんな明るい国際交流によるボーダーレス化は大歓迎ですよね。
貿易
スーパーに並んでいる食材の中に国産のものはどれだけあるでしょうか。
輸入食材や海外生産の食品は今や当たり前です。
そうでなければ土地が少なく自給率の低い日本では様々な食材や食品を扱うことができませんよね。
原材料を生産することに特化した国もあれば日本のように加工して輸出することが得意な国もあります。
それぞれ各国の得意分野を活かして経済協力できるのは大きなメリットがあります。
国家の資金が低い方へと移動する
ボーダーレス化により、国内市場と海外市場の境目がなくなり、労働力も海外から調達できるようになります。
ある企業が海外に自社の工場を建てるとします。その場合、当然安いコストで工場を建てたいですよね。
そうすると人件費等を安くあげるため、必然的に賃金の安い新興国を選びます。
工場を建設するための人件費は新興国の人々の雇用に使われますね。
工場を建てるための土地もその国の土地が購入されますし、使用する電気やガスの料金もその国の収入になるわけです。
ボーダーレス化により、経済的に豊かな先進国から貧しい国へと資金が移動します。
教育
ボーダーレス化することで、教育の分野にも影響が広がっています。
日本国内でもインターナショナルスクールで外国の言語や文化を勉強することを選ぶ家庭が増えています。
実践的なプログラムにより多国籍や異文化に触れることで、自国だけでなく世界規模で物事を考える力を養います。
島国根性とよく言いますが閉鎖的な考えを捨て、他国の文化や考え方を受け入れそれを当たり前だと思える世界基準の人材が育つわけですね。
ボーダーレス化の反面…
「ボーダーレス化」や「グローバル化」で世界が一つになる!というポジティブな未来を描いていた私は安直だったようです。
自分たちの利益を優先して、他者はどうなっても構わない!…という考え方は変わらないのでしょうか。
国家間の政治的ボーダーレス化は実現するのか?
ボーダーレス化が世界規模で進むのと逆行して、残念ながら世界のあちこちで民族紛争が起きています。
また、グローバルな事業展開を行っている多国籍企業にとってEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)による経済連携の推進は、海外で事業を展開するうえでの環境が整備されるという利点がありますが、政治的には逆に制約が強まってしまうという現象が起きています。
多国籍企業は、そのような側面も考慮してグローバル戦略を練りながら海外展開を進めているのです。
たしかに企業の事情にばかり合わせて物事を決めては国同士の摩擦が起きるのは当然かも知れません。
「グローバル化」とは聞こえはいいですが、どの企業やどの国も自分たちの利益を見込めるからボーダーレス化を進めるのです。
残念ながら私のような平和だけが願いの凡人が理想とするボーダーレス化とは程遠いようです。
グローバル化を敵にしたトランプ大統領
これだけ広い分野でボーダーレス化が進み、もはやその流れは世界的にとめることはできないでしょう。
しかし!この流れに逆らう政策をとっている人物がいますよね。
アメリカのトランプ大統領です。
トランプ氏の影にかくれてわかりづらいのですが、実はEUなどの先進国が次々と反グローバルを掲げはじめているのです。
ボーダーレスによるグローバル化が進んだ結果、自国に不利益がもたらされたので「こうなったのはグローバル化のせい」と反グローバルを叫ぶのは、国内で起こった不満因子を選挙での勝利に利用したに過ぎないのではと私は感じています。
アメリカの一部の労働者が被った不利益の元凶は本当にグローバル化だったのか?
自国だけが利益を上げればいいという考え方には賛同しかねます。
まとめ
- ボーダーレス化とは経済活動や情報、文化などが国境を越えて広がっている現象のこと
- ボーダーレス化とグローバル化の違いは「ボーダーレス化した結果グローバル化する」と解釈するとわかりやすい
- 経済だけではなく身近な文化や教育にもボーダーレス化の影響は感じられる
- 現時点でのボーダーレス化は自国優先で「グローバル」とは程遠い
紀元前の昔から、人類は領土についてボーダーをひいてこだわってきました。
領土の奪い合い、資源の奪い合いなどで過去にどれだけの戦争が起こってきたのでしょうか。
私が小さい頃NHKで放送されていた「プリンプリン物語」という人形劇の劇中歌の歌詞に「海があって山があって地球はきれいな星なのに。向こうでお腹が空いていて、こっちはどんどん食べ残し。自分勝手に暮らしてる」といった歌詞がありました(うろ覚えですが)。
日々の食べ物にも困っている人々の姿や、経済的に苦しいがために小さい子供が被害者にされている国の現状を見聞きするたび、あの歌詞を思い出してしまいます。
自国が大事なのはわかりますが、本当の意味で世界がボーダーレスになる日は来るのでしょうか。
もし、そんな日が来たとしても…宇宙へ進出した人類が今度は星の領土を巡って紛争を繰り返すのではと危惧しているのは私の考えすぎでしょうか…。