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「殿」と「様」宛名はどちらの敬称が正しい? 使い分けの基本

投稿日:2019年2月5日 更新日:

皆さん、正しい敬語使えていますか?

口頭では多少間違った使い方をしても流してもらえることがありますが、文書ですと間違った敬語が履歴として残ってしまいます。

恥ずかしい思いをしないように、正しい使い方を知りたいところですが…。

先日私は、勤めている法人内の別事業所の所長あてにFAX送信する際、少し迷ってしまいました。

同じ法人内のやり取りで「様」という敬称は合っているんだろうか?と。

そこで、以前に同様の状況で送ったFAXの履歴を探し出してみたのですが、その文書の敬称は「殿」だったんですよね…。

「様」が正しいのか「殿」が正しいのか?簡単な内容の文書をFAXするだけなのに敬称が気になってしまい、随分時間を費やしてしまいましたよ。

「様」と「殿」の違いとは?

文書を読む作業着姿の男性
そもそも「様」と「殿」の違いを正しく説明できるでしょうか?

どちらもれっきとした敬称ですし、受け取る文書をみると意外に混在していて本当はどのように使い分けられるのが正しいのかわからなくなってしまいます。

まずは「様」と「殿」にはどのような違いがあるのか調べてみましょう。

「殿」の歴史的背景

辞書やマナー本で調べてみると「様」は目上の人に、「殿」は目下の人に対して使うとあります。

これはなぜかというと歴史的背景があるようです。

「殿」という字はもともと「大きな邸宅、屋敷」を指す言葉です。「宮殿」や「御殿」はそこからできた言葉ですね。

昔の日本では、人の名前を呼ぶことは非礼にあたり、相手の邸宅がある地名に「殿」を付けて呼んでいました。

そこから敬称の「殿」はお屋敷に住む地位の高い人や主人に当たる人を指して呼ぶときに使われるようになったのです。

おや?それでは「殿」は偉い人に使うのではという印象ですよね。

ところが時代の流れと共に「殿」は一般的な敬称として用いられるようになっていきます。

そこで、より敬意の高い敬称として「様」が登場します。

このように時代の流れとともに「殿」の敬意が低下していった結果、昭和初期の陸軍では最も身分の低い職位に対して「殿」が使われるようになったとか。

また、役所の文書にも原因があるのだそう。

以前、役所から個人にあてた文書の宛名は「殿」を使っていました。

そのため「殿」という敬称が「昔の領主が領民に宛てて出した触書のように、見下した印象を与える」ので目上の人には使えないというマナーに発展したようです。

「殿」はその印象の通り「上の立場から下の立場へ」という解釈で目下に対して使うというわけですね。

役職のあとにつけるのは「殿」?

実は役職名の後につける場合「部長様」という使い方は間違いで「部長殿」が正しいという意見があります。

その理由は相手が目上なので「部長様」とすると、元々敬称である「部長」に「様」をつけるのは二重敬語となり、間違っているという解釈から「役職には様は付けられない」というルールになっていったのです。

たとえば、同様の敬称とされる「先生」に「先生様」とつけるのは違和感があり、二重敬語だと理解しやすいですね。

そこから、役職名には「殿」をつけるという解釈につながったということですね。

なるほど、私が昔のFAXで見た「所長殿」はこの解釈からきたものなのでしょう。

うーん、しかしいくら役職名には「殿」だと言われても、目下の私が「所長殿」と書くのは本当に正しいのでしょうか…?

辞書やマナー本と実践とのギャップ

原稿用紙に文章を書く
役職につける「殿」のように、文法的には合っているのに実際の文書ではためらってしまうというギャップがあるのはなぜでしょう?

文法的に合っているなら失礼に当たらない!と気にしなければいいのでしょうか。

ビジネスシーンでは「殿」を避けている

前述したように、辞書で「様」と「殿」の使い分けを調べると「様」は目上に、「殿」は目下に使うとあります。

しかし、いくら目下相手とはいえ仕事上での文書に「殿」を使うと相手を見下しているという印象を持たれてしまう可能性があり、せっかくの敬語が逆に失礼にあたってしまうこともあるでしょう。

そのため最近では「殿」ではなく「様」を付けることが新しいルールになっているようです。

目下の人に対して「様」を使うことは何ら問題ありませんものね。

たしかに文書を受け取った相手が「正しいか、正しくないか」で判断してくれる相手ならいいでしょう。

しかし実際は文書を受け取った人がどう感じるのかが重要ではないでしょうか。

同様に、役職につける「殿」も避けられる傾向があり、「様」が一般的になっています。

いくら文法的に正しくても見下しているような印象を与えてしまっては本末転倒です。

そういえばドラマ「相棒」で右京さんがよく「部長殿」と呼ばれている場面がありますが、文法的には間違っていないんですね。


しかしながらドラマの流れからみても「部長殿」は皮肉たっぷり嫌味で見下した感じに聞こえますよね。

実践では失礼のないことが最優先

正しい文法が必ずしもふさわしい使い方ではない、という考え方の似たような現象に「コンビニ敬語」があります。

「1,000円からでよろしいでしょうか」というあれです。

1,000円を渡しているのだから「から」をつけるのはおかしいという指摘ですよね。

では「1,000円でよろしいでしょうか」にすると何だか失礼な印象を受けませんか?

そこで正しくは「1,000円お預かりでよろしいでしょうか」となるわけですが、そこまで厳密にレジでのやり取りが気になる人っているのでしょうか。

私は接客業をしていたときにレジでのこうしたやりとりについて言葉遣いの指導を受けたので、指摘されないように正しく使う癖がついています。

それでも自分が他の店で接客を受けた時によほどおかしな言葉遣いでなければ全く気になりません。

言っていることの意味さえきちんと通じていれば何ら問題ないと思うのです。

むしろ大切なのは印象ですよね。たとえ正しい言葉遣いをしていても何だか感じの悪いものの言い方では「二度と来たくない」と思ってしまいます。

これと同様で「様」や「殿」も正しいか正しくないかを知るのは必要なことなのですが、その場に応じて失礼がないかどうかの使い分けを臨機応変にできるほうが能力が高いと言えるのではないでしょうか。

マナーは自然と作られていくもの

昔は使われていた「殿」が見下した印象から避けられるようになり、現在では「様」をつけるべきという新しいマナーはどのように確立されたのでしょうか。

誰かが急に改めたわけではなく、正しいとされている使い方に違和感や疑問を持った人が多数いて徐々に多数派になっていくのではないでしょうか。

例えば「部長様」が二重敬語だとビジネス本で読んで知っていても平社員の自分が「部長殿」と宛名書きするのは抵抗がある…そこで「部長様」と書きます。

他にも同様に抵抗を感じた人が「様」を使う…。

このような人が増えてきて役職名に「様」の敬称を使うことに抵抗がなくなりそれが普通のことになり、新しいルールになっていくのです。

ルールと言うものは時代に応じて変わっていくものですから、現在のビジネスマナーにかなっている使い方をすることが一番なのですね。

「殿」を使う場面とは

給与明細の封筒
現在は「様」をつかうべきという新ルールだとすると、「殿」という敬称は消えていくのでしょうか?

いいえ、「殿」にも使うべき場面がちゃんと存在します。

「殿」を使っても失礼ではない場面を知っておくと便利ですよ。

社内文書の場合

ここでようやく、冒頭の私の疑問を解決する項目へやってきました。

ビジネス文書では「様」を選択するのが望ましいことはわかったのですが、上司とはいえいわば身内に「様」はちょっと他人行儀過ぎるのではと感じた私の違和感はどのように解決できるのでしょうか。

なんと答えは「どちらでも可」のようです。

というのも、「様」と「殿」と社内で使い分けるとしたらその会社の慣例にならうのが一番だそうです。

「様」だと他人行儀に受け取られるので「殿」で統一している会社もあれば、一様に「様」を使っている会社もあるでしょう。

「殿」が慣例で使われている職場であれば右へならえで「殿」でいいというわけです。

会社を代表している場合

会社から個人に対して支払われる給与の明細書には「殿」が付けられていますよね。

会社組織などの団体から個人に対して送付する文書である場合「殿」を用いるのが一般的です。

また、相手が個人でなくても会社を代表して作成する文書であれば「殿」をつけることで代表としての文書という意味合いが強まり、「様」よりも重厚な印象を与えることができます。

実際に上から目線の文書の場合

さて、「殿」という敬称が上から目線だという理由で敬遠されてきた経緯をお話ししましたが、実際に文書の内容が上から目線である場合、逆に「様」を付けるのがおかしいということになりますよね。

例えば車のスピード違反のうち大きく超過していた場合裁判所に呼び出しをくらうのですが(恥ずかしながら実は私、一度経験があります)その際、呼び出し状には「殿」が付けられています。

このように裁判所、検察庁、警察署などからの呼び出し状には「殿」が使われるのです。

自分の名前に「殿」が付けられた呼び出し状…重厚感たっぷりで反省が促される効果がありますよね。

公的な信書ですからそもそも「殿」で間違いありませんし「上から目線で失礼だ!」なんて憤慨される筋合いもありませんしね。

まとめ

  1. 歴史的背景から「様」は目上に対して「殿」は目下に使うとされています
  2. 「様」と「殿」を使い分けるには文法を気にするよりも相手への印象が大事
  3. 「様」を使うのが無難とされていますが「殿」を使う場面もあります

「様」と「殿」を使い分ける基本は、受け取る相手にどんな印象を与えるか想像してふさわしい方を選ぶことのようです。

まさにこの使い分けをして仕事をしているのが弁護士さんです。

弁護士さんは「弁護する対象」と「争う対象」という立場が真逆の人々を相手に仕事をしますよね。

弁護する対象である依頼人あての文書には「様」を、争う相手への文書には「殿」を付けるのだそう。

つまり報酬の対象となる依頼人には「様」、威圧感を与えたい相手には「殿」…。

わかりやすいですね。

これでもう、宛名を書くとき迷いませんね?!

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