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こねたのもり

改良と改善の違いは対象が○○○かどうか! 例文/間違った解釈について

皆さん、改良と改善の違いって何か分かりますか?

普段私たちが何気なく使っている言葉ですが、あまり気に留めたことはないと思います。

しかし、間違った使い方をすると日本語に違和感が出てしまいます!

そこで今回は、改良と改善の違いについて例文を交えながらご説明します。

辞書にはこう記載されている!


さて、こういう時は、まず辞書を引いてみましょう。
お世話になる辞書は、学校でみんなが使っていた「大辞林」です。
さっそく調べてみると…

かいりょう【改良】

物事の悪いところを改めて、前よりよくすること。改善。
「品種を改良する」「改良に改良を重ねる」「改良型」

いや、「改善。」て書いてありますね。一緒じゃないですか。
続いて、改善について調べてみます。

かいぜん【改善】

物事をよい方に改めること。⇔改悪
「待遇を改善する」「改善の余地がある」
〔類義の後に「改良」があるが、「改良」とは具体的なもの、たとえば機械や品種などをそれまでものよりよくする意を表す。それに対して「改善」は抽象的なもの、たとえば条件・待遇などを改めてよりよくする意を表す〕

…おお!
ここで、改良と改善の違いについて説明してくれていますね。

どうやら改良は具体的なものをよりよくすること、改善は抽象的なものをよりよくすることのようです。

ちなみに英語では、改良も改善も[improvement]と表します。中学校か高校で習うやつですね。

しかし改良を[reform]と表記することもあり、改善は[refinement]とも言います。「改良」に関しては[reform]の語訳として明治時代に作られた言葉だそう。

「好き」と[love][like]のように、英語圏ではニュアンスの違いで言葉が異なりますから、日本でもニュアンスの違いで言葉を分けようとしたのでしょうね。

「reformとrefinementって何が違うんだよ…」

「どっちも改善って訳せばよくね?」

「そうだ、改良って言葉つくろうぜ!改善とは若干ニュアンス違うやつ!」

という感じで作られたのでしょうか…。(想像です)

改良の[reform]には「再整形」という意味が含まれています。お家のリフォームなんかもそうですね。

一方、改善の[refinement]には「磨き上げる」という意味が含まれています。

「再整形」と「磨き上げる」…ここでも、具体的か抽象的かの違いが感じられます。

具体的か抽象的か。改良・改善を使った例文


先ほどの辞書の説明がとても分かりやすかったので、ほとんどの人は改良と改善の違いを理解したと思いますが、一応ここでこれらの言葉を使った例文をご紹介します。

偉い方々の書籍から一部分をちょっと拝借。

まずは改良から。

…それからその雑誌はだいぶ改良されたようであります。〈内村鑑三 後世への最大遺物〉
…桃に白桃水蜜桃ができ、葡萄や覆盆子に見事な改良種の現れたのは、…〈永井荷風 葛飾土産〉
…日露戦争がすんだころ、東京で元禄模様、元禄袖などと一緒に改良服というものが大流行した。〈宮本百合子 菊人形〉

雑誌、果物、服…よりよくされているものの対象がはっきりとしていますね。
その他にも機械、農具、商店、邦楽など、どれも存在がはっきりしたものばかりです。

では、改善の方を見てみましょう。

…そこに、精神の自由の下に、人格の改善が行われます。〈小川未明 作家としての問題〉
すなわち真の詩人とは、自己を改善し自己の哲学を実行せんとするに…〈石川啄木 弓町より〉
社会を改善する目的も大衆に肉体的快楽、物的満足を与えるためではない。〈倉田百三 学生と教養〉

改良と比べ、人格、自己、社会と、よりよくする対象は抽象的でぼんやりとしたものばかりです。

他にも調べてみましたが、建築、待遇、将来、経済状態、経営法、社会的地位、衛生条件など、どれも抽象的なものばかりでした。

よりよくする対象が具体的か抽象的かで、どちらの言葉が相応しいのか簡単に分かります。

手段と目的


もう一つ、興味深い考え方を見つけました。

現在の状態をよりよくするための手段か目的か、という違いです。

例を挙げて説明します。

うさぎさんは最近太ってきました。

そこで、体形を改善することにします。そのために、食生活を改良することにしました。

ここでも、先ほどの「具体的か、抽象的か」という違いが出てきますね。

例えば、「痩せる」というのは抽象的な目標で、「食生活を変える」というのは具体的な行動です。

しかし、先ほどと違うのは、よりよくする「対象」が具体的か抽象的かではなく、ひとつの「よりよくする」という行動の段階が関係していることです。

「食生活を変える」のは「痩せる」ための手段とも言えます。

つまり、改良(具体的に部分を改めること)は改善(抽象的に全体を改める)のための手段ともいえるのです。

間違った解釈


ヤフー知恵袋で「改良と改善って何が違うんでしょうか?」という質問がいくつかありました。

それに対して、「改良は良いものをさらに良くすること、改善は悪いものを良く改めること」という答えがいくつかあり、ベストアンサーになっていましたが、これは間違っています。(回答した方すみません…。)

それだけ間違った解釈をしている方が多いという事なので、これについてもご説明します。

まず、改良は「良」という字があるので、何となくそれまで普通の状態、またはそこそこ良い状態だったものをさらに良くする、というイメージがつきます。

「品種改良」などは、元々おいしい作物をさらにおいしく、という感じがしますよね。

しかし、試作品の改良、デザインの改良、土壌改良など、元が悪い状態でも「改良」という言葉を使います。

また、改善は「善」という字があるので、悪行から善行に、というイメージがわきます。

「改善更生」は犯罪者や非行少年が誤った生き方を改め、社会復帰できるようにすることを指しますが、これは「改善更生」という言葉の意味であり、「改善」とは関係ありません。

「体質改善」は健康な体の状態からでも使う言葉なので、間違った解釈をしないように注意しましょう。

まとめ

  1. 「改良」は具体的なものに対して、「改善」は抽象的なものに対して使います
  2. 例文を読んで、改良と改善の違いを理解しましょう
  3. 「改良」は「改善」のための手段と捉えることもできます
  4. 改良と改善の違いについて、間違った解釈に気を付けましょう

改良と改善の違いについて少し詳しくお話してきました。

改良と改善、結局は同じような意味なのですが、使う対象を間違えると言葉に違和感が出てしまうので、気を付けたいところです。

難しく考えることはないので、よりよくする対象が具体的か抽象的かを基準に使い分けていただければOKです!

  • B!